法改正情報(事務所通信)

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12年・4/5月号 従業員の健康管理について

従業員の健康管理について

定められた健康診断等、従業員の健康管理を行っていないと、安全配慮義務違反に問われることがありますのでご注意下さい。

安全配慮義務とは、「労働者が労務提供のため設置する場所、設備もしくは器具などを使用し、または使用者の指示のもとに労務を提供する過程において、労働者の生命及び身体を危険から保護するよう配慮すべき義務」を言います。 最近、労働者の健康をめぐる状況が大きく変化し、安全配慮義務について厳しく問われるようになってきました。そこで、今月号では、職場における従業員の健康管理についてご案内いたします。

1.健康診断の実施
  労働者の健康管理を行う上での基礎的な措置に、一般健康診断の
  実施があります。
  一般健康診断とは、

      @雇入れ時の健康診断
      A定期健康診断
      B特定業務従事者の健康診断
      C海外派遣労働者の健康診断
      D結核健康診断

最近における労働者の健康をめぐる状況は、高齢化に伴う脳・心臓疾患につながる所見を有する労働者の増加、産業構造の変化や技術革新の進展等に伴う職場生活における疲労やストレスの増加等、大きく変化しています。また、過労死の問題が多発し、会社の安全配慮義務についての争いもでてきています。これらを予防するためには総合的な対策を講じる必要があり、特に1年に1回の定期健康診断は安全配慮義務の上で重要な意味を持つようになってきました。 従業員の中には、定期健康診断の受診を拒む方がいますが、その従業員が脳・心臓疾患等にかかったり、死亡した場合、会社の安全配慮義務を問われる場合も出てきまので、 必ず、従業員には健康診断を受けさせるようにして下さい。どうしても受けない場合には、その従業員の家族あてに通知をするなど徹底させる必要があります。

2.健康診断の結果についての医師等からの意見聴取
 事業者は、健康診断の結果(有所見者に限る)に基づき、当該労働者の健康を保持するために必要な措置について、健康診断が行われた日から3カ月以内に医師または歯科医師の意見を聞き、その意見を健康診断の個人票に記載しなければなりません。(産業医の選任されている事業場については、産業医の意見を聞くことが望まれます)

3.健康診断実施後の措置
 健康診断結果に基づく医師または歯科医師の意見を勘案し、必要がある場合は、労働者の事情を考慮して、就業場所の変更・作業の転換・労働時間の短縮等の措置を講ずるほか、作業環境測定の実施、施設または設備の設置または整備その他適切な措置を講じなければなりません。

4.一般健康診断の結果の通知
 脳・心臓疾患等を予防するためには、事業者が適切な措置を講ずるだけでなく、労働者自らが自主的に健康管理に取り組むことが重要であるということから、事業者は、一般健康診断を受けた労働者に対し、当該健康診断の結果を通知しなければなりません。
※これに違反した場合は、50万円以下の罰金となります。また、結果を通知するだけでなく、異常所見のある従業員については、必ず再検査を受けさせる等、厳しい指導が必要になってくると思われます。


以上、従業員の健康管理についてご案内いたしましたが、過労による傷病が労災として認定された場合、必ずその本人・家族と会社との間で民事賠償の争いが発生し、死亡事故ともなれば数千万円から億に近い賠償を請求され、会社の存続にも影響が出てきます。 従って、法定の健康診断の実施と管理については、決しておろそかにせず、きちんと行うことが必要となりますし、もし、従業員からの訴えがあった場合には、業務を中止させ、医師の診断を受けさせるよう指導したり、労働時間・環境等の見直しを行う必要があります。


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