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12年・7/8月号 年俸制活用の注意点について

昨今、労働者の能力や成果に見合った賃金制度として、年俸制が注目されています。しかし、年俸制の場合は、残業などをしても割増賃金を支払わなくても良いなどの誤解がみられたり、既存の制度からの切り替えを会社が強行し得るのかなどの疑問も多かったりします。そこで今月号では、年俸制を活用するにあたっての注意点についてご案内いたします。

H12.4から介護保険制度が始まり、被保険者は、第1号被保険者が市町村の区域内に住所を有する65歳以上の方、第2号被保険者が市町村の区域内に住所を有する40歳以上65歳未満の医療保険加入者(政府管掌健康保険、組合健康保険、船員保険、共済組合、国民健康保険等の被保険者及び被扶養者)となっています。 今月号では、介護保険の保険料の決まり方・納め方、12年度の厚生省による試算等についてご案内させていただきます。

1.年俸制とはどのような制度か
年俸制とは、労働者の能力や勤務成績などに応じて、年間ベースで支払額を決定する賃金制度のことです。

<メリット>
労働者の能力や実績を賃金に反映することができるため、より労働生産性に連動した賃金体系にすることができる。
成果主義や能力主義が明確になるため、労働者は努力すればそれなりの対価を得ることができるということから、勤労意欲の向上を図ることができる。
<デメリット>
勤務評価などの基準作りが難しい。
勤務評価の明確化・透明化・適正運用が難しい。
労働者1人1人の賃金決定に時間がかかる。
減俸した場合に労働者の意欲が低下する。



3.時間外手当等の割増賃金支払いについて
年俸額のうちいくらが割増賃金分なのか(割増賃金分が時間外労働何時間分に相当するのか)月ごとに明確に定められており、割増賃金相当部分が法定の割増賃金額以上支払われている場合には、その割増賃金相当額に達するまでの時間外労働については、年俸のほかに時間外手当を支払う必要はありません。しかし、年俸額のうちいくらが割増賃金分なのかが明確に定められていなかったり、割増賃金相当額を超えて時間外労働をした場合には、割増賃金の支払いが必要になります。

4.割増賃金の算定基礎について
年俸制において、毎月払い部分と賞与部分を合計してあらかじめ年俸額が決定している場合には、1カ月を超える期間ごとに支払われる賃金には該当しないので、賞与部分を含めた年俸額を算定の基礎としなければなりません。 月給部分のみを年俸制にして、賞与は別途、業績などを考慮してその都度決定する方法をとれば、1カ月を超える期間ごとに支払われる賃金とみなされ、賞与部分は割増賃金の算定基礎から除外することができます。

5.社会保険料の算定について
標準報酬を算定する際の賃金には、3カ月を超える期間ごとに支給される賞与(年4回以下のもの)は除くこととされているので、年俸額のうち一定額を賞与として支給している場合の賞与部分(年4回以下の場合)は除いて標準報酬を算定することになります。

6.欠勤での賃金カットについて
労働者が欠勤した場合に、欠勤した日数分の賃金を差し引くという方法は多くの企業で取り入れられていますが、このノーワ−ク・ノーぺイの原則は、年俸制の労働者についても適用することはできます。ただし、年俸制の場合、労働者の業績や成果に応じて賃金額を決定している制度であるため、不就労があったとしても、その分の賃金を差し引くというのは年俸制の趣旨からすればあまり好ましいものとはいえないでしょう。

7.年途中退職者の残余の支払いについて
年俸制は、労働者に支払う賃金額を年単位で決定しているものですが、その支払い形態については、通常の月給者と何ら変わりありません。従って、年俸制の労働者が退職した場合についても、原則として年俸額の残りを支払う義務は生じません。 ただし、契約社員など期間を定めて雇用している者を解雇した場合には、残りの賃金額の支払い義務が生じる場合があります。

以上、年俸制の注意点についてご案内致しました。当事務所では、年俸制への移行等賃金体系の設計も行っております。ご質問・ご用命等ございましたら何なりとお問合せ下さい。


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