法改正情報(事務所通信)

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平成21年を迎えて

 皆様あけましておめでとうございます。
 昨年は波乱万丈の年でした。皆様方にとり想像もできなかった年であったと思います。私ども労務管理のコンサルタントとして、日ごろから労働諸法令を根拠として皆様方のご相談にのっているものにとっても言いようのない無念さでした。
 昨年は労働契約法、パート労働法が次々と施行され労使は全て合意のもとに円滑な労務の提供と、法令遵守が要望されました。
 今回大手企業が行った派遣労働者の派遣契約打ち切り、派遣元の雇用打ち切り、雇い止め、採用内定の取消しは明らかに派遣法、労働基準法、労働契約法、パート労働法に抵触することとなります。国会でもこの重大性を取り上げ新春の国会で派遣法の見直しを急ぐようです。
 雇い止めとなった派遣労働者を援護する地域一般労働組合を中心に使用者と労組との争いも烈火してくる気配もあります。各企業の経営者は下記につきご留意のうえ今年をがんばりましょう。

●就業規則による労働契約の内容の変更(労働条件を不利益に変更する場合)

合理的判断の考慮要素として考慮しなければならない要件
労働契約法第10条

  1. 労働者の受ける不利益の程度  (個々の労働者の不利益の程度)
  2. 労働条件の変更の必要性  (使用者にとって就業規則による労働条件の変更の必要性)
  3. 変更後の就業規則の内容の相当性
    (就業規則の変更の内容全体の相当性 変更後の就業規則の内容面に係る制度変更全般の状況)
  4. 労働組合等との交渉状況
    (労働組合等事業場の労働者の意思を代表する者との交渉の経緯、結果等 労働組合等=労働者の過半数で組織する労働組合とその他多数労働組合。事業場の過半数を代表する労働者。少数労働組合。労働者で構成されその意思を代表する親睦団体等)
  5. その他の就業規則の変更に係る事情  (就業規則の変更に係る諸事情)

上記については従来最高裁の第四銀行事件判決により判例として示されており、これが裁判において基準となっていましたが今後は法律で定められました。これによって裁判で就業規則の変更が合理的であることの主張立証責任は使用者側にあるようになりました。

●整理解雇の四要件(四要素)

 従業員を会社経営上にて整理解雇する場合には従来より解雇権の乱用防止のために整理解雇の4要件が定められこの四要件が全て整わなければ解雇権の乱用とされていました。しかし最近の裁判では個別事案に応じ四要素として考慮要素の一つとして総合的に判断する裁判例も出てきました。いづれにしても下記要件に留意する必要があります。

  1. 人員削減の必要性
  2. 解雇回避努力
    (配転、出向の実施、希望退職の募集、賃金(役員報酬)の引き下げ、残業の禁止、新規採用の中止、一時帰休制度の実施等)
  3. 対象者選定基準の合理性
  4. 解雇手続きの妥当性  (労使協議、労働者への説明等の手続き)

等を要件としています。


●採用内定取り消し

 最近問題になっている内定取り消しの法的意味(判例)

  1. 企業による募集は労働契約申し込みの誘引
  2. 応募、採用試験の受験は労働者の契約の申込み
  3. 採用内定(決定)通知の発進、使用者による契約の承諾
  4. 使用労働契約成立
  5. 契約は始期付きかつ解約権留保つき労働契約(採用内定通知書または誓約書に記載された採用内定取り消し事由が生じた場合解約できる合意記載が必須要件)

採用内定取り消しの適法性

判例「解約権留保の趣旨、目的に照らし客観的に合理的と認められる社会通念上相当として是認することができるものに限られる。」使用者に厳しい。
 使用者の恣意的な内定取り消しについては債務不履行(誠実義務違反)に基づく労働者からの損害賠償請求が認められる。労働者には解約の自由(民法627条9)があるので2週間の予告期間を置く限り自由になしうる。ただし、信義則に反する場合のみ例外として契約責任不法行為責任が問われます。

 前述のように今年は経済状況の厳しい年と思われ、それにつれて労務管理も様々な問題が出てきましょう。上記に関する問題、または、それ以外の要件でもご質問、ご相談あればなんなりとお寄せ下さい。一緒に検討し方策を考えましょう。

以上


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