2006年6月 3日

労働安全法の労務管理上の改正点 (食品工場長寄稿)

労働安全衛生法の労務管理上の改正点について
先般の通常国会で労働安全衛生法等の一部を改正する法律として労働安全衛生法、労働者災害補償保険法、労働保険の保険料の徴収等に関する法律、労働時間の短縮の促進に関する臨時措置法の一部改正をなすが一括され労働安全衛生法の一部を改正する法律として公布され平成18年4月1日より施行されます。今回この中から直接労務管理上に必要な改正点につき紹介します。
 

1. 労働安全衛生法の一部改正
(1) 過重労働・メンタルヘルス対策の充実
事業者は、一定時間(月100時間)を越える時間外労働を行った労働者を対象とした医師による面接指導を行うこと。(法第68条の8)
労働者は上記の面接指導を受けなければならないが、事業者の指定した医師以外が行う指導面接を受け、その結果を事業主に提出したときはこの限りでない。とされました。
 事業者は、面接指導の結果の記録、面接指導の結果に基づく必要な措置についての医師の意見の聴取、その必要があると認める場合の作業等の変更、医師の意見の衛星委員会等絵の報告の措置を講じなければならない、とされました。
ただし、常時50人以下の事業場については産業医の設置義務の関係から、平成20年3月31日まで適用猶予措置がされています。しかし、小規模事業ほど時間外労働時間の増大も予想され、事業主は上記基準を超すような労働者の健康管理には十分な留意を望みたい。
 面接指導の実施に従事した者は、知り得た労働者の秘密を漏らしてはならない
(罰則6ヶ月以下の懲役又は50万円以下の罰金 法104条、法119条)とされ個人情報保護の面からもその取り扱いに注意が必要です。
長時間労働によるとする脳・心臓疾患の労災認定件数は平成15年度312件
過重労働に起因する精神障害の労災認定件数は平成15年度108件におよび従来認定基準となっていたものを安全衛生法に規定し法制化した。
2. 労働者災害補償保険法の一部改正
(1) 複数就業者の事業場間の移動、単身赴任者の赴任先住居・帰省先住居間の移動を、通勤災害保険制度の対象とすること。
  1 複数就業者の場合
                第一事業場 →†→第二事業場

        ↑          ↓

        †←  住居 ← †
第一事業場から第二事業場へ移動する間の事故については†を第二事業場への出勤とし保険関係の処理(労災申請)は第二事業場で行うことになります。なお、† †についても従来どおりの通勤労災の適用を受けます
  2 単身赴任者の場合

      事業場     →    †

       ↑

       †             ↓

       ↓

     赴任先住居 ← † →  帰省先住居

  単身赴任者の場合†, †の場合事業場と住居との直接通勤となり†の場合の事故も通勤労災の対象とされていましたが今回赴任先住居と帰省先住居の間の往復†も通勤と認め通勤労災の対象と法制化しました。
3.労働保険の保険料の徴収等に関する法律の一部改正
(1) 有期事業に関する保険料のメリット増減幅(原稿±35%)を継続事業と同じ
±40%とすること。 具体的には事業終了後に事業期間中の実績からメリット収支率を算出し、その値に応じて±40%の範囲内で労災保険料の額を増減します。
4.労働時間の短縮の促進に関する臨時措置法の一部改正
  (略)
以上その概略を説明しましたが、今後この法律の施行のために必要な政省令等が制定され
施行期日:平成18年4月1日となります。

    以上の中で特に事業者として留意したいのは、過重労働とメンタルヘルス対策、最近メンタルヘルスによる労務管理の問題が多発してきました。労働安全衛生法で事業主の義務が規定化された後は、当然安全配慮義務違反の争いも生じることを念頭に置き十分な管理をきたいします。                          以上
 

投稿者 otuji : 2006年6月 3日 | トラックバック (0)

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