2007年9月 2日

パートタイム労働法

パートタイム労働法を熟知しましょう
平成20年4月より改正パートタイム労働法が施行されます。現在企業で雇用されるパートタイマーは30%を超えるとされています。また、従来パートタイマーは家計を補うための就業者とされていましたが、今日ではこの収入が生活の基幹収入となってきました。また、個別労働紛争も正規社員との間のものからパートタイムの従業員との間での紛争が主体となってきました。企業の事業主及び労務管理の任に当たる管理者の方々はこの改正法を熟知しトラブルの発生を防ぎましょう。

1.「パート労働者」とは
 社長さんに、「パートタイム労働者を正社員と同じ仕事をさせていますが、会社では正社員とパートの区分はどうしていますか?」と尋ねても明確な回答が得られません。この法律で対象となるパート労働者はパートタイム労働法第2条においてパート労働者を「1週間の所定労働時間が同一の事業所に雇用される通常の労働者(正社員)の1週間の労働時間に比べて短い労働者」としています。従ってこの条件に当てはまる場合、「パートタイマー」「アルバイト」「嘱託」「契約社員」「臨時社員」「準社員」等名称の如何を問わず「パート労働者」となります。ちなみに総務省の統計では、週35時間以下の就業の労働者を対象としています。

2.改正のポイント
 改正法では義務規定と、努力規定にわかれています。

義務規定
(1) 雇入れ時の一定の労働条件の明示の義務化(第6条)
労働基準法第15条に定める労働条件の明示事項に加え昇給、退職手当、賞与の有無を文書の交付等(fax,電子メール等を含む)による明示する義務化  違反は10万円以下の罰金
(2) 待遇の決定にあったって考慮した事項についての説明の義務化(第13条)
雇入れ後、パート労働者本人から求められたとき、待遇を決定するに当たって考慮した事項を説明する事が義務化されました。(説明必要事項:労働条件の明示、就業規則の作成手続、待遇の差別的取扱い、賃金の決定方法、教育訓練、福利厚生施設、正社員への転換推進制度の各措置に関する決定に当たって考慮した事項)  違反は10万円以下の罰金(3)「正社員と同視すべきパート労働者」の待遇の差別的に取扱うことを禁止(第8条)具体的には職務、人材活用の仕組み、契約期間の要件が正社員(通常の労働者)と同視すべきパート労働者か否かにより賃金、教育訓練、福利厚生などの待遇の取扱を規定します。 †正社員と職務(仕事の内容や責任)が同じ
†正社員と人材活用の仕組み(人事異動の有無、範囲)が全雇用期間を通じて同じ
「人材活用の仕組みが全雇用期間を同じ」とはパート労働者の職務が正社員と同一になってから、雇用関係が終了するまでの間の人事異動の有無や範囲が事業所の従来からの慣行などから判断して正社員と同一と見込まれる場合を言います。
†正社員と契約期間が実質的に無期契約となっている。

(4)パート労働者から正社員への転換推進の義務化(第12条)
†正社員を募集する場合、その募集内容をすでに雇っているパート労働者に周知する。
†正社員に新しい配置ポストを社内公募する場合、既に雇っているパート労働者にも応募する機会を与える。
†パート労働者が正社員へ転換するための試験制度を設けるなど、転換制度を導入する。
努力義務
(1)賃金の決定(第9条)
†パート労働者の賃金を決定する際は、正社員との均衡を考慮し、職務の内容、成果、意欲、能力、経験等を勘案する事とされます。これは事業主の主観で決めたり、パート労働者一律の固定給でなく職務内容、能力、経験に応じて段階的に決定することを努力義務とされます。
†更に正社員と職務と一定期間の人材活用の仕組みが同じ場合は、賃金を正社員と同一の方法(同じ賃金表、同じ給与制度,同じ評価基準等)で決定する努力義務となりました。
(2)教育訓練(第10条)
正社員との均衡を考慮し、職務の内容、成果、意欲、能力、経験等に応じてパート労働者の教育訓練を行うことが努力義務となりました。さらに、正社員と職務が同じ場合は、正社員に行う職務の遂行に必要な教育訓練について既に必要な能力を有している場合を除き行うことが義務化されます。
(3)福利厚生(第11条)
健康を保って働くための施設や福利厚生の施設(給食施設、休憩室、更衣室)についいてパート労働者に利用の機会を提供するように配慮する事が義務化されました。
(4)パート労働者からの苦情の自主解決(第19条)
パート労働者から苦情の申出を受けたときは、事業所内で自主的な解決を図ること我努力義務化されます。
(5)パート労働者との紛争解決援助(第21,22条)
パート労働者との紛争解決援助の仕組みとして、都道府県労働局長による助言、指導、勧告、紛争調整委員会による調停が設けられます。

以上解説しましたように、現在雇用している短時間勤務労働者(パートタイマー)が通常の労働者と同視される雇用状態に当たるか否かで労務管理の手法が大きく変わります。
もし通常の労働者と同一視された場合、雇い止めするときは整理解雇の4要件の類推適用がされ、解雇権の濫用が問われるおそれが出てきます。また事業主に上記の義務が発生します。

【通常の労働者と同視されないためには】
1.フルタイムパートを通常労働者と職務の内容、配置の変更を区別するため、例えば就業規則、雇用条件通知書等に「時間外休日労働を命じない、転勤等の配置の変更をしない」等を明記し区別する。
2.更新手続を期間満了前に面談し、厳格な更新手続をして期間の定めある雇用者として明確にすること。
3.出来れば勤務時間を通常の労働者より勤務時間を短くすること。
4.契約の更新は必ず期間満了の日の30日以上前に確実に次期の更新手続を完了することを励行し、期間雇用労働者であることを確実に行い労働条件の明示書も第一項の記述のように正規雇用と区別した条件で契約すること。

以上平成20年4月パート労働法が施行されるまでに自社で雇用するパート労働者の雇用契約状況を精査して対応を整えておくことをお勧めします。
以上
 

投稿者 otuji : 2007年9月 2日 | トラックバック (0)

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