2015年8月28日

ストレスチェック制度の導入準備のために

  労働安全衛生法が改正され、労働者が50人以上いる事業所では、平成27年(2015年)12月から毎年1回ストレスチェック検査をすべての労働者*に対して実施することが義務付けられました。

 *契約期間が1年未満の労働者や、労働時間が通常の労働者の所定労働時間の4分の3未満の短時間労働者は義務の対象外です。

 以下上記ストレスチェック制度の導入準備について解説します。

 

 

 

 

1.何のためにするのか

  近時「うつ」などのメンタルヘルス不調を訴える労働者が増大してきました。従業員が自分のストレス状態をすることで、ストレスをためすぎないように対処したり、ストレスが高い状態の場合は医師の面接を受けてもらう、あるいは会社の仕事の軽減などの措置を実施する等「うつ」などのメンタルヘルス不調を未然に防止するための仕組みです

2.企業はどのように準備し推進したらよいか

 1.事業所の衛生委員会開催

   衛生委員会で下記の事項を検討します。

   1.うつ病等による休業者の有無と人数等事業所の現状の調査

   2.従業員に対しての説明方法

スレスチェックの内容を決め従業員に発表用内部規程を作成します。

   3.制度全体の担当者*1・実施者*2・実施事務従事者*3・面接指導する担当医師等*4の決定(届出の必要はありません。)

    上記2の発表用内部規程に明示します。

    *1 ストレスチェック制度の計画づくり進捗状況を把握管理する者

    *2 医師、保健師、厚労大臣の定めた研修を受けた看護師・精神保健福祉士、社会保険労務士等の中から選びます。

    *3 実施者の補助をする者:質問票の回収、データ入力、結果送付など、個人情報を取扱う業務を担当する者、外部委託も可能です。

    *4 産業医が適切です。

4.事業者のメンタルヘルスケアを積極的に推進する旨の表明します。

    5.平成28年4月が新年度始まりの企業は、3月までに衛生委員会での事前準備を進める必要があります。

   2.内部規定を作り、社内に周知

1.平成28年4月の衛生委員会からストレスチェックの内容を決め、内部規定や議事録に残します。

  ポイント

  ? 目的がメンタルヘルス不調の未然防止(一次予防)であり不調者の早期発見(二次予防)ではないことを明示します。

  ? 実施体制(医師、保健師、看護師、精神保健福祉士の有資格者、社会保険労務士(=実施者)、複数なら共同実施者と実施代表者、

       実施事務従事者(=事務担当者)の明示。

  ? 実施方法(使用する調査票、評価方法、高ストレスの評価基準)の決定。

  ? 従業員一人ひとりが受けたか、どうかという情報の取扱い

(会社側による把握と受検勧奨も)。

  ? 分析結果の利用

(ストレスチェックの面接指導の申出の勧奨)の決定。

  ? 個人の結果の保存方法

(保存者、保存場所、セキュリティの確保を含む)。

  ? 個人の結果の事業者への提供の同意を取得する方法。

  ? 個人の結果に係る情報の開示、訂正、追加または削除の方法と取扱いに関する苦情の処理方法。

  ? 従業員はストレスチェックを受けなくともかまわないこと。

 

  3.ストレスチェックの内容、受検から通知まで

  1.ストレスチェックで確認すること

1. 今年12月から義務化のスチレスチェック調査に厚生労働省は

  ”職業性ストレス簡易調査表”利用を推奨しています。

 職業性ストレス簡易調査表の具体的な質問内容は

〈仕事のストレス要因〉

    ・時間内に仕事が処理しきれない。

・自分のペースで仕事ができる。

・部署内で意見のくい違いがある等。

〈ストレス反応〉

・ひどく疲れた(疲労)

・不安だ(不安)

・ゆううつだ(抑うつ)

・そのほか、食欲不振や不眠 等

〈周囲のサポート〉

・上司、同僚に対して;どのくらい気軽に話ができますか?困ったとき、頼りになりますか? 等

  2.評価の仕方と結果の取扱い

1.ストレスチェックを受ける人は、頻度や程度を4段階で回答します。

2.回答結果(例)

・ 仕事のストレス要因では心理的な仕事の量や質の負担、

・ 対人関係でのストレスといった小項目ごとに標準的データと比較して5段階で評価されます。

3.評価者

・ 医師、保健師等の実施者

4.小項目ごとの特徴

       ・「ストレスプロフィール」と呼ばれる、レーダーチャート等のわかりやすい形式で受検者に返送されます。

5.非常にストレスが強い場合

・ ”高ストレス状態”と評価結果になります。

  具体的には「ストレス反応」の項目が非常に高い点数と「ストレス反応」がある程度高く、「仕事のストレス要因」が強く、「周囲のサポート」が乏しい場合

  ”高ストレス状態”にあたるとされます。

6.ストレスチェック制度

・ 仕事のストレス要因、ストレス反応、周囲のサポート等

 見方により機微で人間関係に影響する内容を受験者は回答を受けます。

 (例)

・ ”部署内で意見のくい違いがある”が ”そうだ”と回答

  ”気軽に話ができますか?”に対して ”全くない”と答え

 経営者や管理職の意に反する場合、解雇や雇い止めのような不利益を被る恐れがあります。

・ 健康にまつわる個人情報(健康情報)はプライバシーに当たります。そのため、個人の ”ストレスプロフィール”と評価結果が正直に回答した人の不利益にならぬよう、健康診断と異なり、会社側には返されないことも知らせておく必要があります。

   3.受験者への通知と案内

1.ペーパーがICTを用いた手法であればEメールで、受検者に返されます。

  内容 「高ストレス状態ではない場合」

・ストレスプロフィール

    ・セルフケアのアドバイス

   「高ストレス状態である場合」

これに加えて

・医師の面接指導の対象であること

・会社への面接指導の申出方法

・その他、相談可能な窓口の情報

2.ストレスチェックの主たる目的 未然防止

 ・ すべての働く人が受検することが望ましい

 ・ 会社側には医師等の実施者から受検していない人が誰なのか通知します。

 ・ 会社側からその人たちにストレスチェックを受けるよう勧めるこ 

      とが出来ます。

 ・ 実施者には医師による面接指導を誰が受けたかを通知します。

 ・ 実施者は、高ストレス状態との評価結果で高ストレス状態と評価

  結果があったにもかかわらず、医師の面接指導を受けていない人た   

      ちに対してこれを受けるように勧奨します。

 ・ ”高ストレス状態”との結果だった人が医師の面接指導を申出るか、評価結果を見て同意してはじめて、その結果が社内の予め限定した人たちに通知されることとされます。

   4.医師による面接指導の流れ

1.ストレスチェックの結果 ”高ストレス状態”と評価結果が通知された従業員にたいし

 ? 医師による面接指導を勧める。

 ? 「面接指導を希望する」と申し出た従業員の結果

 ? 実施者(専門家)からの企業の窓口に通知

 ? 通知されるのは人事部門の窓口のみ

 ? 結果を無条件で上司に開示は不良。

 ? 面接指導は、事業場で契約している産業医か職場の健康管理に従事している医師が行う。

 ? ストレスチェックを健診機関やメンタルヘルス相談機関の医師に依頼する場合でも医師会認定産業医等の資格が必要。

 ? 医師の面接指導の聴取時以降

?) 勤務の状況 (労働時間、業務内容等は予め人事部門から提供)

    ?) ストレス要因 (職場の人間関係、業務・役割の変化の有無等)

    ?) 心理的な負担の状況 (抑うつ症状等)

?) 周囲のサポート状況

?) 心身の状況の確認 (過去の健診結果や病気の既往の確認を含む)

 2. 得られた情報や問診、診察の結果医師は下記のような助言、保健指導を行います。

?) ストレス軽減のための適切な対処行動の勧め。

例)問題対処に集中する方法、認知の特徴を知り行動を変えていく方法、運動や睡眠のような生活習慣を改善すること、信頼する人に聞いてもらう方法、気晴らしを行う等。

?) 疲労の蓄積があれば、睡眠や休養を取りやすい生活環境にする。

?) 睡眠障害の場合の節酒の勧め。

?) 強いストレス要因を軽減することが出来ないかという検討を行い、就業時間の制限や作業場所の転換のような措置の要否を相談する。

 

   5.専門医の紹介と就業上の意見

 1. 医師が治療の必要なレベルの不調があると判断した場合

?) 専門クリニックや病院に受診する必要性を考え紹介する。

例)めまい、ふらつき、嘔気、などの自律神経症状や倦怠感などの身体症状が強い場合。

  うつ状態が強く、うつ病や不安障害が疑われる場合。

  睡眠障害があって日常業務の遂行に支障をきたしているような場合。

 2. 医師が必要と考えると

?) 就業時間の短縮や就業の禁止。

?) 作業や作業場所の転換

?) 深夜業の減少や昼間勤務への転換等

   意見を会社側に提出する。

 3. 会社はその意見を企業内で検討

当該する従業員に対して、これらの就業上の配慮や措置を行う。

?) 本人の結果が人事部門等に通知された(3.−1)場合、医師の面接指導を経ないで、就業上の措置を実行することは、本人の不利益になる可能性があるため禁じられています。

?) 就業上の措置が講じられる前に、本人とよく対話し、同意を得られるように努力する必要あり。

 3.過重労働面接と相談窓口を活用

    1. メンタルヘルス対策のコンプライアンス

?) 月間100時間以上の時間外労働を行った従業員に対する、”

 過重労働面接”の実績があるか。(法的義務)

    ?) 過重労働面接を該当従業員の希望に基づいて行っているか

?) 産業医等から就業上の措置に関する意見が提出されているか。

?) 企業が "過重労働面接”の仕組みがなければ、法的義務と

 してストレスチェック制度が開始される前に速やかに導入を

 する必要がある。 

2.過重労働面接で医師が該当する従業員からの聴取する内容

?) 保健指導等の内容とほぼ同様

?) 本人が面接を望まず、不調の未然防止を目指すストレスチェック制度の実効性が失われる恐れがあるため、

?) 外部委託機関等の保健師、看護師等にワンクッションの意味で健康相談を置く制度がある。

?) 結果通知で案内し、相談の中で、医師による面接指導を勧めることが出来る。

 

 以上ストレスチェック制度についての対応策を記述しました。制度導入に関し、社内規定の見直し、従業員に対する説明等ご要望があれば是非幣事務所までご連絡ください。

以上

 

投稿者 otuji : 2015年8月28日 | トラックバック (0)

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